田中 誠さん(43歳)
元ITエンジニア → 2023年 君津市清和へ移住
東京・渋谷のスタートアップでエンジニアとして10年。週末移住から始め、2023年に完全移住。現在は古民家をDIYしながらリモートワークで生計を立てる。
「移住」という言葉が遠くなった日
最初に清和に来たのは、友人に誘われた薪割り体験がきっかけでした。当時の僕は「移住」なんて、定年退職後に考えることだと思っていた。子どもを地方の学校に通わせるか、農業で食っていけるか——そういう話は、まだ自分とは遠い話だと。
でも、あの日、裏山で斧を振り下ろした瞬間に何かが変わった気がしました。うまく言えないんですけど、「自分が何かに直接触れている」という感覚。東京でパソコンの前に座っているときにはない、皮膚に近い手応えがあった。
「週末だけでいいや、と思っていたのに。
気づいたら、月曜に東京に戻るのが
少しだけ名残惜しくなっていた」
最初の半年は、月2回のペースで清和に通いました。古民家の縁側で飲む缶ビールが、渋谷のクラフトビールよりおいしく感じた。それが何を意味するのか、当時はわかっていませんでした。
物件を探したのは「循環通信」だった
本格的に移住を考え始めたとき、最初にぶつかったのは物件探しの壁でした。SUUMOやアットホームで検索しても、清和エリアの物件はほぼ出てこない。地元の不動産屋は、外から来た人間に対して少し壁がある感じがした。
そんなときに友人から「循環通信」のメルマガを教えてもらった。登録して最初のメールが届いたとき、物件情報だけじゃなくて「その家でどんな暮らしをした人がいるか」が書いてあった。それが決め手でした。
今の田中さんの一週間
- 月〜木:リモートワーク(古民家の書斎で)
- 金曜午後:裏山の手入れ・薪割り
- 土曜:DIY作業・近所の農家のお手伝い
- 日曜:読書・ゆっくり過ごす
「完璧な物件」を探すのをやめた
見つけた物件は築60年の古民家。雨漏りあり、床が傾いている、隙間風が入る——正直、普通の基準で見たら「NG」の物件です。不動産屋には「やめておいたほうがいい」と言われました。
でも、循環通信の吉川さんに相談したとき、「直せるところと直せないところを一緒に見ましょう」と言ってくれた。物件の欠点を一緒に読み解いてくれる人が初めてできた感じがした。
「完璧な物件を待っていたら、
一生清和には来られなかったと思う。
傾いた床も、今では愛着が湧いている」
移住から2年が経って
今、僕の一日は薪割りで始まります。朝6時に起きて、裏山の間伐材を30分ほど割る。ぼんやりした頭で斧を振っていると、その日何をすべきか自然に整理されてくる。東京にいたころ、スタンディングデスクや瞑想アプリで解決しようとしていたことが、これで足りるようになった。
移住して何が変わったか、とよく聞かれます。仕事は変わっていない。収入もほぼ同じ。でも、一日の終わりに「今日、身体を使った」という感覚がある。それだけで、なぜか十分な気がするようになりました。